カレースターの貧弱な知識と電波な思考 5

さて、ダイジェスト版でイギリスカレーの「まっとうな」歴史を確認した後で、あらためて水野仁輔さんのデタラメなイギリスカレー史を見てみましょう。

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「幻の黒船カレーを追え」を読んではいないが、水野仁輔さんの独特なカレー史に興味ある方は、ほぼ日の連載を読んで下さい。すぐ読み終わります。短いですが、これが水野さんのイギリスカレー史の全てなのです。要約版ではありません。


http://www.1101.com/curryschool/shoutai/2017-03-05.html

 

水野仁輔さんは、カレー粉を使ったブリティッシュカレーが生まれるのは、1877年以降だと主張します。

 

”1877年、ヴィクトリアを皇帝として推戴するイギリス領インド帝国が成立する。ここから加速度的にインド人がイギリスに流入し、インド料理も伝播するようになった。そんな状況下、インド料理からブリティッシュカレーが生まれたのである。”

 

もちろん、これはデマです。カレー粉を使ったカレーレシピはこの100年前、1777年にはすでに存在します。

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水野さんは、1861年のビートン夫人の料理書を”ブリティッシュカレーのレシピを残す最古の書物1845年に料理書を出版したイライザ・アクトンを”現時点ではイギリスで最も古いブリティッシュカレーのレシピを残した人物”という主張をしていたはずです。

 

いずれも1877年より前の話です。ブリティッシュカレーが1877年以降にインド移民によって作られたという自説と、時系列が矛盾します。

 

1800年代初頭にC&Bがカレー粉を販売し、イギリス全土に広まったと「幻の黒船カレーを追え」にあります。それでは、1877年までの数十年間、カレー粉は何に使われていたのでしょうか?

 

水野さんは”イギリスからブリティッシュカレーがやってきたのは、明治維新の頃”と主張しますが、1877年以降にブリティッシュカレーが生まれたのならば、1868年の明治維新に間に合いません。明治5年(1872)年に発行された、日本初のカレーレシピが載っている西洋料理通と西洋料理指南にも間に合わないのですが?

 

このように、水野さんのカレー史は内部矛盾をかかえています。なぜなら、事実とかけ離れた、デタラメで構成されているからです。

 

水野さんは、イギリスの伝統的カレー(ブリティッシュカレー)は、アングロインディアンカレーの隆盛によって衰退していったと考えます。後者の代表的メニューがチキンティッカマサラだそうです。

 

”その点、ブリティッシュカレーとは一線を画すカレーが当時のイギリスにはすでに存在していた。それは、アングロインディアンカレー(料理)である。”


”軍配は、アングロインディアンカレーに上がることになる。”

 

”勝利をおさめたアングロインディアンカレーの代表格と呼べるのが、“チキンティッカマサラ”というカレーである。”

 

実際には、東インド会社が解散した1858年から、アングロインディアンカレーは衰退してゆきました。現在のイギリスのカレーは主にバングラディッシュ移民が支えており、チキンティッカマサラも彼らの発明です。

 

水野仁輔さんが深い考えも知識もなく、場当たり的にデタラメな歴史を捏造していることがおわかりいただけたでしょうか。