カエルカレーは実在した 1

さて、明治5年に発行された西洋料理指南は、西洋料理通と並んで、現存する最古のカレーレシピが載っている本です。

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材料の一つに赤蛙がでてきます。よく、日本最古のカレーレシピはカエルを使った、というトリビアに引っ張り出されるレシピがこれです。

 

「幻の黒船カレーを追え」において、水野さんはロンドンの友人めぐみさんから次のようなメールを受け取ります。

 

”『西洋料理指南』に出てくる赤蛙は、”誤訳”だったんじゃないかと思う。やっぱりどう考えても赤蛙はないでしょ。イギリスで昔から料理に使われている地鶏があって、それは『RED FOWL』って呼ばれているの。これを誤訳したんじゃないのかな。”

 

これはあくまで、資料の裏付けのない仮説の一つ(後に述べるように他にも仮説はあります)なのですが、このメールに対する水野さんのリアクション芸がものすごい。

 

”メールの文面を読みながら心臓がバクバクするのがわかった。

 

”東京の自宅で深夜に一人、確信を持った僕は、長年、まことしやかに語り継がれてきた日本のカレー史がガラガラと音を立てて崩れ落ちてゆくイメージが頭の中を駆け抜けた。すごい!すごい発見だよ!もし、めぐみさんが遠くロンドンではなく、目の前にいたら、僕は全力でめぐみさんを抱きしめていたかもしれない。それはどんな文献にも指摘されていないことで、僕はノーベル賞を取ったような気持ちになった。

 

赤蛙程度でガラガラと音を立てて崩れ落ちてゆくカレー史。日本のカレー史もノーベル賞も随分と安っぽくなったものです。

 

”赤蛙は地鶏の誤訳”説は、資料の裏付けのない、複数の仮説のうちの一つ。証拠もなしにそんなにはしゃいだら、その仮説が間違っていたとわかったときに、はしごを外されて恥ずかしい思いをするだけです。

 

では、今からそのはしごを外します。”赤蛙は地鶏の誤訳”説は間違いです。

 

なぜなら、カエルカレーは150年前に実在していたからです。また、日本において赤蛙のカレーが作られ、食べられていた可能性は高いと考えます。

 

証拠となる資料を提出していきましょう。

 

The Illustrated London Newsの1857年7月18日号、74ページに次のような記事が載っています。

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字が潰れて読みにくいので、文字を書き起こします。

 

"but the English have a dish which would surprise you - no less a one than frog curry ; and, to tell the truth, it is the most delicious thing I ever tasted. I never saw frogs eaten in France, and Englishmen here think them a luxury."

 

”イギリス人はあなたが聞いて驚くような料理を食べる。カエルカレーだ。冗談ではなく、生涯食べたものの中でこれほど美味しいと思ったものはない。私はフランスの食用ガエルを見たことはないが、ここのイギリス人はフランスの食用ガエルは贅沢品だと思っている。”

 

絶賛されるカエルカレー。まだまだ、資料はたくさんあります。明日に続きます。