カレーに関する5つのデマその2 イギリスにカレーを伝えたのはヘイスティングス提督ではありません

カレーに関する5つのデマその2 イギリスにカレーを伝えたのはヘイスティングス提督ではありません

 

 2つめのデマは、イギリスにカレーを伝えたのが初代インド総督・ヘイスティングスであるというデマです。

 

 盗作と捏造の詐欺本「幻の黒船カレーを追え」には以下のように書かれています。

 

 ”インドからイギリスにカレーが伝わったのは1770年代前半頃だと言われている。イギリス東インド会社が植民地として支配していた。後に初代ベンガル総督となるヘイスティングスがカレーの原料と米を持ち帰り、それをもとにカレー粉が発明され、やがてはヴィクトリア女王にも献上された。”

 

 ところがその続きにはこう書かれています。

 

 ”1747年にイギリスで書かれた「明解簡易料理法」にあるカレーのレシピは、イギリスで最古のカレーのレシピと言われている。”

 

 1770年代前半に伝わったカレーのレシピが、1747年発行の料理本に書かれている!?時をかけるカレー!?

 

 水野さん、自分で書いていておかしいとは思わなかったのでしょうか?

 

 もっとも、1877年に生まれたブリティッシュカレーが、1868年の”明治維新のころ、イギリスから日本に伝わった”という珍説=デマを披露する水野さんのことですから、単に何も考えていないだけなのかもしれません。

hikaridept.hatenablog.com

 

 最古のカレーレシピが書かれた本が出版されたのは1747年。その時点で、ヘイスティングスはまだインドに行っていません。これについては、漆原次郎さんの考証を参照してください。

jbpress.ismedia.jp

 というわけで、イギリスにカレーを伝えたのはヘイスティングス提督というのはデマです。「インドカレー伝」(リジー・コリンガム)によると、インド駐在の東インド社員達が手紙を使って、あるいはイギリス帰国時にカレーを伝えたということです。

 

 さて、このヘイスティングデマ、C&Bがカレー粉を発明したというデマと同じく、日本国内にのみ流れているデマ、つまり、日本人が日本人を騙すために捏造したデマと思われます。英語圏では聞かないデマなんです。

 

 誰がこのデマを作ったのかは不明ですが、このデマの検証に失敗したのが、「カレーライスと日本人」を書いた森枝卓士さんです。

 

 森枝さんは1747年発行の「明解簡易料理法 The Art of Cookery made Plain and Easy」を”大英図書館にこもってみつけだした”のですが、発行年の1747年を1774年と間違えてしまいます。

 

 以下は大英図書館によるThe Art of Cookery made Plain and Easyの紹介。1747年になっていますね。

The Art of Cookery

 

 森枝さんはヘイスティングデマを明確に否定するチャンスを、凡ミスにより失なってしまったわけです。それどころか、”1772年に持ち込まれたものが、74年刊行の本に記されているのは自然なことではある”と、デマにお墨付きを与え、デマの拡散に貢献してしまったのです。